チュートリアル

このチュートリアルについて

このチュートリアルでは AviUtl拡張編集PSDToolKit の導入から、PSDToolKit が持つ機能の基本的な部分を一通り紹介していきます。

なお、仕組みへの理解を深めるためにチュートリアルの中ではあえて非効率な作業を行うシーンがあります。

インストール

このチュートリアルでは AviUtl の導入先は C:\AviUtl とします。
他のフォルダーでも基本的には動作しますが、フォルダー名が長すぎたり、日本語などが含まれていると動作しないことがあります。

AviUtl の配布元サイトから `aviutl110.zip` と `exedit92.zip` をダウンロードし、C:\AviUtl へ解凍します。

そして exedit.auf と同じ場所へ psdtoolkit_vX.X.zip も解凍します。

すべてのファイルを完了した時の様子

完了すると C:\AviUtl の中身は概ね上記のようになります。

上手く動かないときは

この先の手順でエラーダイアログが表示されたり上手く動いていないと思われる場合は以下が参考になるかもしれません。

設定の変更

使用を開始する前に、近年では一般的なサイズである 1920x1080 の動画を作れるように設定を変更します。

aviutl.exe をダブルクリックして起動します。

初回起動

メニューから ファイル環境設定システムの設定 を選び、システムの設定 ダイアログを表示させます。

システムの設定

設定が終わったら OK を押して システムの設定 ダイアログを閉じ、設定内容を反映させるため AviUtl ウィンドウも閉じて終了させてください。

おまけ: ショートカットキーの変更

この変更は必須ではありませんが、ショートカットキー Ctrl + S編集プロジェクトの上書き に割り当てると、こまめな保存に便利です。

メニューから ファイル環境設定ショートカットキーの設定 を選び、ショートカットキー登録 ダイアログを表示させます。

  1. 左のリストから [ファイル][AVI出力 (Ctrl+S)]を選択
  2. 右のリストの一番上にある なし を選択
  3. 左のリストから [ファイル][編集プロジェクトの上書き]を選択
  4. 右のリストから S を選択し、更に Ctrl にチェックを付ける
  5. OK ボタンを押してダイアログを閉じる

ショートカットキー登録

新規プロジェクトを作成

aviutl.exe をダブルクリックして起動します。

二度目の起動

メニューから 設定拡張編集の設定 を選び、拡張編集 ウィンドウを表示させます。

拡張編集 ウィンドウ

拡張編集ウィンドウで右クリックメニューを出し、新規プロジェクトの作成 を選びます。

拡張編集 ウィンドウで右クリックメニューを表示

表示された 新規プロジェクトの作成 ダイアログで画像サイズを 1920×1080 に設定します。

新規プロジェクトの作成 ダイアログ

OK を押すと新規プロジェクトが作成されます。

それに合わせて AviUtl ウィンドウの大きさも広がるため、必要に応じて AviUtl ウィンドウのメニューから 表示拡大表示25% を選ぶなど、見やすい大きさに調整してください。

PSD ファイルの読み込み

今回使用する PSD ファイルを、以下のリンクからダウンロードしてください。

im5467479.psd(水梟るさん制作、一次配布元はこちら

※動画制作に使用する場合は一次配布元の記載及び CeVIO キャラクターライセンスを厳守した上で利用してください。
※さとうささらはトーク・ソング対応音声合成ソフトウェア CeVIO Creative Studio のキャラクターです。

ダウンロードしたファイルを 拡張編集 ウィンドウへドラッグ&ドロップして読み込みます。

新規プロジェクトの作成 ダイアログ

するとタイムラインに PSD ファイルオブジェクト が追加されます。

PSD ファイルの読み込みが完了した状態

この時点で AviUtl ウィンドウで表示されているプレビューは動画の一番最初のフレームを表示しているため、タイムラインに追加されたアイテムがピッタリ左端にくっついていない場合はプレビューに現れません。

その場合はアイテムをドラッグして一番左にくっつけて、プレビューに画像が表示される状態にしてください。

画像が表示されないときは

このチュートリアルで使用している PSD ファイルでは起きませんが、他の PSD ファイルを読み込んだときに上手く表示されないことがあるかもしれません。

レイヤーの切り替え

AviUtl のメニューから 編集PSDToolKitウィンドウを表示 を選んで PSDToolKit ウィンドウ を表示させます。

PSDToolKit ウィンドウ

PSD ファイルにあるレイヤーの一覧が表示されています。

!目 フォルダーの中にある *にっこり レイヤーをクリックしてください。

表情変更後

表情が変わりましたが、この時点ではまだ AviUtl 側には反映されていません。

左上にある 送る ボタンを押してみてください。
Ctrl + S のショートカットキーでも押せます)

エラーダイアログ

上手く反映されませんでした。

PSD ファイルオブジェクトPSDToolKit ウィンドウ で編集している画像は 1対1 で対応しているわけではないので、設定を反映させるためにはどのオブジェクトに反映させるのかを明確にしなければいけません。

改めて、拡張編集 ウィンドウのタイムラインにある PSD ファイルオブジェクト をダブルクリックします。

タイムライン

するとプロパティが表示されます。

PSD ファイルのプロパティ

このウィンドウにある複数行テキスト入力欄が見えている間だけ、送る ボタンは動作します。

改めて 送る ボタンを押してみてください。

表情が反映された状態

今度は無事に変更が反映されました。

ヒント: 前のパーツが非表示にならないときは

このチュートリアルで使用している PSD ファイルはラジオボタン化機能に対応しているためワンクリックでパーツの切り替えができますが、対応していないファイルでは前のパーツが自動的に非表示に切り替わったりはしません。

このような PSD ファイルでは前のパーツを手動で非表示にしてください。
非表示にする際の注意点

なお、ラジオボタン化/反転レイヤー指定機能などは PSD ファイルに予め備わっているような機能ではないため、一般的な PSD ファイルはこの仕組みには対応していません。
PSDTool の独自拡張機能

左右反転

反転 と書かれた項目の左側にあるスライダーを -1 から 1 に変更してみてください。

PSD ファイルのプロパティ

左右反転後

画像が左右反転されました。

また、画像をよく見比べてみると、単純に左右反転しただけではなく髪の結び目の位置が変化しています。

反転時の特殊処理に対応した画像ではこのように内容自体が変わることがあるため、画像を反転したいときはこの機能を使うことが推奨されます。

目パチ(瞬き)

プロパティの右上にある ボタンを押して アニメーション効果 を選択します。

アニメーション効果を追加

一番下にアニメーション効果が追加されますが、描画@PSD のスライダー辺りを右クリックしてメニューを表示し、フィルタ効果を下に移動 を選んで 描画@PSD と位置を入れ替えます。

描画@PSD を下に移動

そしてコンボボックスを 震える から 目パチ@PSD へ変更します。

目パチ@PSD を選択

設定 ボタンを押して パラメータ設定 ダイアログを表示させます。

パラメータ設定 ダイアログ

このダイアログを開いたままで、PSDToolKit ウィンドウ!目 の中にある *通常 を右クリックしてメニューを表示させ、"*通常" を「開き」に割り当て を選びます。

パラメータ設定 ダイアログ

同じように *つぶり閉じ に割り当ててください。

パラメータ設定 ダイアログ

正しく割り当てられていればこのようになります。

できたら OK を閉じてダイアログを閉じます。

パラメータ設定 ダイアログ

目パチの設定前に表情を *にっこり に変更していましたが、目パチ@PSD により *通常 で上書きされています。

右下にある5つのボタンのうち、左から2番目と3番目がそれぞれ 1コマ戻る1コマ進む ボタンなので、このボタンを使って目の表示が切り替わるのを確認してみてください。

また、目パチの 速さ1 以外にしてアニメーション速度を調節したり、オフセット の変更で目パチのタイミングを変えてみてください。

ヒント: 目パチが上手く動かないときは

チュートリアル用に用意した PSD ファイルでは上手く動いても、他のファイルでは上手くいかないかもしれません。

そのようなときは以下の項目を参照してください。

口パク(リップシンク)

まずは、今回使用する音声ファイルなどを以下のリンクからダウンロードしてください。

audio.zip
※この音声は CeVIO Creative Studioさとうささら を使用して作成したものを加工したものです。
※これらのファイルをこのチュートリアルを完了させるため以外の目的で使用することを禁止します。

口パクには音量解析データが必要で、そのデータは 口パク準備 を使うと作成できます。

PSD ファイルオブジェクトLayer 3 に移動します。

なお、口パク準備PSD ファイルオブジェクト より上のレイヤーに置く必要があります。
下だと描画後に音声解析データが割り当てられるため、表示への反映が1フレーム遅れることになります。

パラメータ設定 ダイアログ

まずは音声ファイルをタイムラインの Layer 1 にドラッグ&ドロップで挿入します。

音声ファイル の追加

音声ファイル 自体は追加しなくても問題ありませんが、追加したほうが盛り上がります、気分が。

次に 拡張編集 ウィンドウでの右クリックメニューから メディアオブジェクトの追加PSDToolKit口パク準備 を選び、Layer 2口パク準備 を挿入します。

口パク準備 の追加

挿入された 口パク準備 の位置や長さを調整して、音声と同じ範囲にしてください。また、Layer 3 にある PSD ファイルオブジェクト はそれらよりも長くなるように変えます。

位置や長さの調整

口パク準備 をダブルクリックしてプロパティを表示させ、下にある 参照 ボタンを押して音声ファイルを選択します。

音声ファイルの選択

これで音量解析データが作成されるようになったので、このデータを利用して口パクを設定します。

まず PSD ファイルオブジェクト のテキスト入力欄にある lipsync = 0lipsync = 2 に書き換えます。
Layer 2 にある 口パク準備 を使うため)

口パク準備 があるレイヤーを設定

そして 目パチ の時と同じ方法で 口パク 開閉のみ@PSD を追加します。

口パク 開閉のみ@PSD の追加

もしダイアログが縦に長すぎる場合は左上にある ボタンを押すことで開閉できます。

口パク 開閉のみ@PSD にある 設定 ボタンを押して、口の開いた形と閉じた形を設定します。

口パクのパターンを割り当て

この PSD ファイルには口を閉じた形は存在しないので、ここでは *ふぇー で代用しました。

動作確認

再生ボタンを押すと、音声に合わせて口が動くのが確認できます。

ヒント: 口パクが上手く動かないときは

チュートリアル用に用意した PSD ファイルや音声ファイルでは上手く動いても、他のファイルでは上手くいかないかもしれません。

そのようなときは以下の項目を参照してください。

字幕

音声に合わせて表示する字幕を作成します。

字幕も口パクと同じように準備オブジェクトが必要です。

PSD ファイルオブジェクトLayer 4 に移動し、右クリックメニューから メディアオブジェクトの追加PSDToolKit字幕準備 を選び、Layer 3字幕準備 を挿入します。

なお、字幕準備字幕表示 より上のレイヤーに置く必要があります。
下だと描画後に字幕データが割り当てられるため、表示への反映が1フレーム遅れることになります。

字幕準備 を追加

字幕準備 も音声と同じ範囲に設定します。

字幕準備 のプロパティを開くとテキスト入力欄に セリフ と書かれた箇所があるので、これを字幕として表示したいテキストに書き換えます。

セリフを入力

これで字幕のテキストデータが準備できたので、次は実際に表示を行います。

右クリックメニューから メディアオブジェクトの追加PSDToolKit字幕表示 を選び、Layer 5字幕表示 を挿入します。

字幕表示 を追加

そして 字幕表示 のプロパティのテキスト入力欄にある layer = 1layer = 3 に書き換えます。
Layer 3 にある 字幕準備 のデータを表示するため)

レイヤー指定を書き換え

あとは自由に表示の設定を変更して、読みやすい形にすれば設定完了です。

字幕の表示確認

再生ボタンを押すと、喋っている間だけ字幕が表示されるのが確認できます。

口パク準備と字幕準備の配置を効率化

実際の動画制作においては 口パク準備字幕準備 は音声とセットで大量に配置することになるため、これを効率的に配置できるようにします。

AviUtl のメニューから 編集PSDToolKit環境設定 を選び PSDToolKit 環境設定 ダイアログを開きます。

PSDToolKit 環境設定 ダイアログ

上記の画像のように 「口パク準備」を生成「字幕準備」を生成 にチェックをつけ OK を押して閉じます。

Shift キーを押しながらファイルをドロップ

*.wav ファイルだけを上記のように投げ込むと 口パク準備字幕準備 が自動的に生成され、字幕準備 には同じ名前の *.txt ファイルの内容が書き込まれた状態になります。

ファイルをつかむ前から Shift キー を押してしまうとエクスプローラーなどの挙動が変わってしまい、上手くつかめないことがあるので注意してください。

これで今後は *.wav ファイルと同じ名前の *.txt ファイルさえあれば、Shift キー を押すだけで 口パク準備字幕準備 が作成できるようになりました。

なお上記のスクリーンショットでは PSD ファイルオブジェクト字幕表示 のアイテムの長さが足りていないので、きちんと画像や字幕を表示させるためにはそれらの長さの調節も必要です。

ヒント: 口パク準備の設定の簡略化

音声ファイルの内容によっては口パク準備のプロパティを変更する必要がありますが、1つ1つに違う値を設定するのではなく一括で同じ値を設定したいときは、PSD ファイルオブジェクト にある ls_locut/ls_hicut/ls_threshold/ls_sensitivity の設定を使うと一気に上書きできます。

ヒント: 字幕のテキストを自動で置換

setting.lua を作成し、P:wav_subtitle_replacer の設定を行うことで実現できます。

ヒント: ファイルをドロップする作業自体の効率化

作成した音声ファイルを Shift キーを押しながらドロップするのが面倒なら、かんしくん を利用することで、AviUtl の現在のカーソル位置に作成されたファイルを自動で挿入することもできます。

動画の途中で表情を変更するために

ここまでの内容で、目パチしながら音声に合わせて口パクし、同時に字幕が出せるようになりました。

さらに *.wav ファイルの追加時に自動で 口パク準備字幕準備 が作成できるようになったので、音声ファイルをどんどん加えるだけでちょっとした動画を作ることができるようになりました。

しかし、このままでは途中で表情の変更ができません。
(アイテムを分割すれば変えられますが、それは物理的に増やしているので途中とは言えません)

また 目パチ を設定した際に起きたように、目のパターンを *にっこり にしても 目パチ が表示を上書きしてしまうなど、同じ箇所のパーツを複数箇所で設定すると煩わしい部分もあります。

ここからはこの PSD ファイル専用のアニメーション効果を作成することで、編集時の作業効率の改善を図ります。

*.anm ファイルを作成する

PSD ファイルから *.anm ファイルを作成します。

PSDToolKit ウィンドウ!眉 の中にある *普通 を右クリックしてメニューを表示し、"*普通" と同じ階層にあるレイヤー全てをファイルにエクスポート を選びます。

"*普通" と同じ階層にあるレイヤー全てをファイルにエクスポート

するとファイルに名前をつけて保存するためのダイアログが表示されるので、今回はそのまま 保存 を押します。
(ファイル名を変える場合、ファイル名には @ は使わないでください。拡張編集ではこの記号には特別な意味があり、期待通りに動かなくなります)

名前をつけて保存ダイアログ

保存したファイルを読み込ませるためには AviUtl の再起動が必要になりますが、現在編集中のプロジェクトを一度も保存していないので、ここで保存しておきましょう。

AviUtl のメニューから ファイル編集プロジェクトの保存 を選び、好きな場所に好きな名前で保存してください。

その後 AviUtl を閉じ、改めて起動して、AviUtl のメニューから ファイル最近使ったファイル(保存したプロジェクト名) を選んでプロジェクトファイルを開き直してください。

そして PSD ファイルオブジェクト から 目パチ@PSD口パク 開閉のみ@PSD を削除(右クリックメニューから フィルタ効果の削除)し、新しく アニメーション効果 を追加して、描画@PSD を下に移動し、さっきエクスポートしたファイルの名前を選択します。

作業後の設定内容

このような状態になります。

!眉 のスライダーは 03 の範囲で選ぶことができ、0 のときはこのスライダーでは上書きせずに元々の表示を優先します。

このスライダーを使うことによって、もう PSDToolKit ウィンドウ に切り替えなくてもパーツを変更できるようになりました。

他のスライダーを有効化する

!眉 の下にはまだ有効化されていないスライダーがあるので、これに他のパーツも割り当てていきます。

メモ帳 を起動し、さっき作成した C:\AviUtl\script\im5467479-!眉.anmメモ帳 へドラッグ&ドロップして読み込みます。

メモ帳 で開いた状態

今度は !目 の中にある *通常 を右クリックしてメニューを表示し、"*普通" と同じ階層にあるレイヤー全てをクリップボードにコピー を選びます。

クリップボードにコピー

コピーした内容をテキストの下に貼り付けます。

テキストの下に貼り付け

貼り付けたテキスト内の track0track1 に書き換えます。
(最初のスライダーが track0 で、次のスライダーが track1 だから)

track0 を track1 に書き換え

そして --track1 から始まる行を上に移動して、--track0 と並べます。

--track1 の行を移動

同じ流れで !くち の項目も増やしましょう。

!くち を追加

これでメモ帳を上書き保存し、AviUtl のプロジェクトも上書き保存し、AviUtl を閉じて、改めて起動し、プロジェクトを読み込みます。

スライダーが有効化された状態

スライダーが3つ使えるようになりました。

スライダーを操作すると、それぞれのパーツが切り替わることが確認できます。

ヒント: スライダーが4つでは足りない場合

*.anm ファイル自体を複数用意することで、もっとたくさんのパーツを使うことが可能です。

また、拡張編集の制限によりひとつのオブジェクトに追加できるフィルター効果は10個までですが、描画@PSD を削除して下のレイヤーに配置すればもっとたくさんの効果を使うこともできます。

ヒント: パーツがひとつのフォルダーにまとまっていないときは

PSD ファイルによっては、例えば目のパーツが2箇所以上のフォルダーに分かれて存在するようなケースもあります。

このような場合は一括登録はできませんが、必要な数だけ項目を追加し、--track0 などの行にあるスライダーの最大値も足した数だけ増やせば、変則的な構成でも対応可能です。

--track0:!目,0,9,0,1
--             ↑5個足したので最大値も 4 + 5 = 9 に書き換え
local values = {
  "v1.!目/*通常",
  "v1.!目/*にっこり",
  "v1.!目/*ぐるぐる",
  "v1.!目/*つぶり",
  "v1.!目2/*追記1", -- ここから下が追加したレイヤー
  "v1.!目2/*追記2",
  "v1.!目2/*追記3",
  "v1.!目2/*追記4",
  "v1.!目2/*追記5",
}
PSD:addstate(values, obj.track0)

ただしこのようなケースではそもそもレイヤー管理が煩雑になる可能性が高いため、PSD ファイル側を編集したりシンプルビューを利用して対応したほうが、結果的に簡単に解決するかもしれません。

目パチを追加する

さっき削除した 目パチ@PSD を、改めてスライダーの項目のひとつとして追加します。

このリンクを右クリックして新しいウィンドウで開き、入力用フォームを表示します。

レイヤーをクリップボードにコピー

目パチ に割り当てたいパーツを右クリックしてコピーし、ブラウザ側の入力欄に貼り付けます。

フォームに貼り付けた例

前回と同じように、*通常*つぶり をそれぞれ 開き閉じ に割り当てました。

その他、必要に応じて 速さ なども変更してください。

入力が終わったらクリップボードにコピーし、メモ帳に貼り付けます。

そしてその後ろにカンマ , を加えます

項目を追加した例

!目 の項目をひとつ書き足したので、!目 のスライダーの最大値を 4 から 5 に書き換えます。

スライダーの最大値を書き換え

これで !目 のスライダーが 1 の時には目パチを行い、25 の時はその目のパターンを表示するようになりました。

必要に応じてこの目パチはいくつでも登録することができます。

口パクを追加する

口パクも目パチと同様の手順で行えます。

このリンクを右クリックして新しいウィンドウで開き、入力用フォームを表示します。

あとの作業内容は同じなので省略します。

--track0:!眉,0,3,0,1
--track1:!目,0,5,0,1
--track2:!くち,0,5,0,1

local values = {
  "v1.!眉/*普通",
  "v1.!眉/*(´・ω・`)",
  "v1.!眉/*(`・ω・´)",
}
PSD:addstate(values, obj.track0)

local values = {
  require("PSDToolKit").Blinker.new({"v1.!目/*つぶり","v1.!目/*通常"},4,1,0),
  "v1.!目/*通常",
  "v1.!目/*にっこり",
  "v1.!目/*ぐるぐる",
  "v1.!目/*つぶり",
}
PSD:addstate(values, obj.track1)

local values = {
  require("PSDToolKit").LipSyncSimple.new({"v1.!くち/*ふぇー","v1.!くち/*ワ"},1,true),
  "v1.!くち/*ワ",
  "v1.!くち/*ムー",
  "v1.!くち/*ふぇー",
  "v1.!くち/*あー!",
}
PSD:addstate(values, obj.track2)

ここまでの編集が終わった段階で、メモ帳の中は概ね上記のような内容になります。

それでは改めてメモ帳を上書き保存し、AviUtl のプロジェクトも上書き保存し、AviUtl を閉じて、改めて起動し、プロジェクトを読み込みます。

追加された項目

スライダーを上記のように設定すると目パチと口パクが動き、1 以外にすれば目パチなどで上書きされずに他のパターンも表示できるようになりました。

途中で表情を変更する

PSD ファイルオブジェクト の表情用のスライダーの名前をクリックして、瞬間移動 を選択します。

瞬間移動 を選択

これで右側のスライダーが使えるようになります。

次に、PSD ファイルオブジェクト のアイテムを真ん中あたりを右クリックし、中間点を追加 を選択します。

中間点を追加 を選択

プロパティ表示中のアイテムに表示される点線が、全体ではなく中間点を境目として表示されるようになりました。

中間点が追加された状態

点線の左側が左側のスライダー、点線の右側が右側のスライダーに対応しています。

そのため、例えば上記の状態で左側のスライダーを 1 右側のスライダーを 3 に設定すると、前半は 1 で、後半は 3 で表示されるようになります。

このように中間点を追加することで、タイムラインの途中で表情の切り替えができるようになりました。

多目的スライダー

中間点を使った表情の切り替えも有用ですが、その他に「一時的に変更し、あとで戻す」という用途に特化した機能もあり、「喋っている間だけ表情を切り替える」といった形で表情を切り替えたい場合には大変有用です。

Layer 3Layer 5 にあるアイテムを一段下にずらし、拡張編集 ウィンドウでの右クリックメニューから メディアオブジェクトの追加PSDToolKit多目的スライダー を選び、多目的スライダーLayer 3 に挿入します。

なお、多目的スライダーPSD ファイルオブジェクト より上のレイヤーに置く必要があります。
下だと描画後に多目的スライダーのデータが割り当てられるため、表示への反映が1フレーム遅れることになります。

多目的スライダー

追加した 多目的スライダー の範囲を音声と同じにします。

また、字幕準備 の位置が変わったので 字幕表示 のテキスト入力欄で layer = 3layer = 4 に修正しておきます。
Layer 4 にある 字幕準備 を使うため)

そして PSD ファイルオブジェクト のテキスト入力欄で、mpslider = 0mpslider = 3 に書き換えます。
Layer 3 にある 多目的スライダー を使うため)

mpslider = 3 に書き換え

これで多目的スライダーが使えるようになりました。

多目的スライダー のプロパティ

多目的スライダー には名前がないスライダーが予め8つ用意されており、名前や項目数は連動していないものの、上から順に !眉 !目 !くち のスライダーが割り当てられていて、0 以外の値を指定するとスライダーの値を一時的に上書きできます。

試しに名前がない2番目のスライダーを 5 に変更してみてください。

多目的スライダーの動作確認

喋っている間は一時的に !目*つぶり になりますが、その範囲が終了すると元々の表情に戻ります。

この機能は中間点を追加する方法の代わりとして使うこともできますし、併用することもできます。
もちろん音声と同じではない範囲に設定することもでき、更には多目的スライダーに中間点を追加して使うようなこともできます。

多目的スライダーの配置を効率化

口パク準備字幕準備 と同じように 多目的スライダー も音声と一緒に自動で配置することができます。

口パク準備と字幕準備の配置を効率化の時に使ったダイアログで 「多目的スライダー」を生成 にチェックを入れれば、多目的スライダー も自動的に生成されるようになります。

準備オブジェクトの集約

ここまでの作業で、Layer 2 から Layer 4 を準備用のオブジェクトが専有するようになりました。

準備用オブジェクトがたくさんあるスクリーンショット

この状態なら、例えば長い音声に合わせて 字幕準備 の分割を行ったり、多目的スライダー だけ長さを伸ばして複数のセリフに渡る表情を作ったりすることもできるため、これはこれでメリットがあります。

しかしそのような操作が全く必要ない場合には、これらをひとつのレイヤーに集約させることができます。

AviUtl のメニューから 編集PSDToolKit環境設定 を選び PSDToolKit 環境設定 ダイアログを開き、すべての準備オブジェクトを単一のオブジェクトへ統合 にチェックを入れます。

環境設定ダイアログにあるチェックボックス

これで、今後追加される準備オブジェクトはひとつの 統合準備オブジェクト に集約されるようになります。
(つまり、今まで配置されたものが勝手に変更されることはありません)

統合準備オブジェクト

統合準備オブジェクト にはすべての機能が含まれているため、例えばこの場合だと 口パク準備多目的スライダー字幕準備すべて Layer 2 に配置されている状態になります。

そのため、基本的に未統合のものとは併用できないため注意してください。

ブラッシュアップ

ここまでで、PSDToolKit が持つ機能を活用した基本的なチュートリアルは完了です。

表情変更をスライダーだけで行えるようになり、更には発言中だけ表情を切り替えるようなことも簡単になったので、表情がコロコロ変わる動画を作るのも簡単になりました。

ここからは、更に細かい部分に目を向けていきます。

喋っている間だけ画像を表示させる

メインのコンテンツがキャラクターではなく同時に流している動画などである場合には、キャラクターを常に表示するのは避けたいこともあるかも知れません。

口パク準備多目的スライダー を使っているならば、subobj アニメーション効果 を使うことで手間なくそれを実現できます。

PSD ファイルオブジェクト に、基本登場@subobj を2つ登録します。

基本登場@subobj を下に2つ追加

これは PSD ファイルのレイヤーを変更するためのものではないので 描画@PSD よりも下に配置します。
また、下の 基本登場@subobj速さ(秒) にマイナスの値を指定することで、退場用の効果として設定しています。

基本登場@subobj の動作例

これだけで、多目的スライダー がある範囲に合わせて自動的に登場/退場用のエフェクトが掛かるようになりました。
なお 口パク準備 しか使っていないときは 口パク準備 がある範囲が対象になります。

設定を変更したり、基本登場@subobj 以外のアニメーション効果も試してみてください。

字幕の表示に演出を追加する

字幕の文字も、ただ表示するだけではなく登場と退場に効果を加えることができます。

フェード@subobj を追加

字幕表示文字毎に個別オブジェクト にチェックを付けて、更に フェード@subobj のアニメーション効果を追加します。

フェード@subobj の動作例

これだけで1文字ずつフェードインするようになりました。

音声フィルタ

ここからは音声に対する処理について紹介します。

音量を上げたことによる音割れの回避

試しに、音声ファイルのプロパティで 音量400 に設定して試聴してみてください。
(元の4倍の音量になるので大音量に注意してください)

音量がある場所

とても大きな音が出ますが、それ以上に音が割れて不自然な鳴り方になりました。

拡張編集では限界(ピーク)を超えて音量を上げようとすると、音が割れてしまいます。

さっき変えた 音量100 に戻し、Layer 5Layer 6 のオブジェクトをひとつ下に移動し、拡張編集の右クリックメニューから フィルタオブジェクトの追加チャンネルストリップ を選び、Layer 5チャンネルストリップ を挿入します。

チャンネルストリップ を追加

長さを調整して、字幕表示などと合わせます。

長さを調整

次に チャンネルストリップ のプロパティで ID0 に、そして試しに 出力音量10000 にしてみてください。
出力音量10000 にすると4倍の音量に相当します)

プロパティの変更

視聴してみると、先程よりは幾分聞き取りやすい状態になりました。

音声ファイル ではなく チャンネルストリップ で音量を上げれば、音が割れるほどの音量になったときは自動的に音量が絞られるようになります。

複数の音声による音割れの回避

複数の音声が同時に流れるようなときは、音量を上げていなくてもピークを超えて音が割れてしまうことがあります。
例えばゲームの音声に合わせて喋るようなときは、いつ音割れが起きるのか予測するのが困難です。

このようなときはそれぞれの音声に チャンネルストリップ を通すことによって、ある程度回避できます。

チャンネルストリップ の影響範囲

チャンネルストリップの ID は、処理したい音声の塊ごとに 0 以上の固有の番号を割り当てて使います。
(同じフレーム内で同じ ID を使ってしまうと音が鳴らなくなります)

また、複数のチャンネルストリップを配置したときは、前のチャンネルストリップから次のチャンネルストリップまでの間に設置された 音声ファイル が処理対象になります。

そのためこのように チャンネルストリップ を3つ設定した場合は、黄色く着色されたゾーンがそれぞれの チャンネルストリップ の影響範囲になります。

この例だと あいさつ.wavあいさつ2.wavID1チャンネルストリップ によって処理されます。
あいさつ.wavあいさつ2.wav は同時に再生されない配置になっているため、同じチャンネルストリップで処理しても音が割れてしまう心配はありません。

ヒント: 最初から音が割れている *.wav ファイル

加工する前から音が割れてしまっているファイルは、既に必要な情報が失われた状態なので元に戻すことはできません。

その他のエフェクトについて

ゲーム映像に合わせて喋るような動画を作る場合は、ゲームの音と声が被って聞き取りづらくなることがあります。

試しに EQ HiGain10000 にしてみてください。

これは極端な変更なので実際の動画で使うべき設定ではありませんが、再生して音を確認すると、声が明るい音に変化します。

このようにイコライザーを使って高い周波数を強調すると音が目立ちやすくなりますが、同時に耳障りにもなるため気をつけて使ってください。

終わりに

キャラクターが2人になったときは、おそらく以下のような構成が基本形になるでしょう。
見通しを良くするために余白も含んでいます。

キャラクターが増えた時のタイムライン

Layer 1Layer 12 までは、画面に表示されないオブジェクトだけが置いてあります。

これらのオブジェクトが置いてあるレイヤー番号は PSD ファイルオブジェクト字幕表示 で番号を指定する必要があるので、配置するレイヤーをコロコロ変えるような使い方には適していません。
そのため、最初から最後まで一貫して同じレイヤーに置けるよう、最初に全て置いてしまうのが簡単です。

そのあとで PSD ファイルオブジェクト字幕表示 を置けば、重ね合わせ順を変えるのも容易です。

もちろん全てルートシーン上に置く必要はないので、PSD ファイルオブジェクトに関連するものを置く専用のシーンを作ったり、キャラクターごとにシーンを分けたりすることもできますが、これはこれで作業効率が犠牲になる側面があるので扱い方には注意が必要です。